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真空薄膜形成と装置

3. 真空についての基礎

ここでは、真空を利用して薄膜形成をおこなう上で、知っていた方が良い事柄を説明します。

3.8 真空を計るには

真空を利用するプロセスにおいて、真空圧力の管理がプロセス全体の安定性を左右し、結果として製品の歩留まりに影響を及ぼします。また、プロセスによっては、真空中の残留ガスやプロセス中の分圧を管理する必要があります。
一般に用いられている真空計には、残留気体の種類によらず全体の真空圧力を測定する全圧真空計と、気体の種類ごとに分圧を測定する分圧真空計があります。
表3.2 代表的な全圧真空計の測定範囲
全圧真空計の種類 測定圧力範囲(Pa)
ピラニ真空計 104〜10-1
キャパシタンスマノメータ 大気圧(105)〜10-2
B-A 型熱陰極電離真空計 10-1〜10-6
ペニング型冷陰極電離真空計 1〜10-3
スピニングロータ真空計 1〜10-4
(注)実際に市販されている真空計は、この測定範囲の一部のみをカバーするものが多い。選定にあたっては、各機種ごとの測定範囲の確認が必要

  1. 全圧真空計
    表3.2に代表的な全圧真空計と測定範囲を示し、簡単に説明します。
    i)ピラニ真空計
    低圧気体の熱伝導が気体の圧力に依存することを利用し、加熱された金属細線の温度変化を電気抵抗の変化として計測する真空計です。中真空(100Pa〜0.1Pa)の計測に多用されています。測定子の例を図3.9に示します。

    ピラニ真空計の測定子


    ii)隔膜真空計
    圧力差による隔膜の弾性変形を機械的、電気的に読み取る真空計です。多く利用されているタイプは、隔膜と対向した電極間の距離の変化を静電容量の変化として測定し圧力の変化に換算するキャパシタンスマノメータです。大気圧から中真空の領域で用いられます。測定子の構造例を図3.10に示します。

    キャパシタンスマノメータの測定子


    iii)熱陰極電離真空計
    熱フィラメントを陰極として、放出された電子により気体をイオン化し、そのイオン電流を測定して圧力を知る真空計です。三極管型電離真空計の測定子を図3.11に示します。
    通常、最も普通に利用されている熱陰極電離真空計はB-A型です。これは、測定子が図3.12のような構造のもので、BayardとAlpertによって考案されたため、このように呼ばれています。円筒状のグリッドの外側に熱陰極を配し、中心軸上に細線のイオンコレクタ電極を配した構造で、軟X線による光電子電流を低減し、測定限界を広げたところに特徴があります。高真空、超高真空を利用する真空装置において、最も多用されている全圧真空計です。
    なお、タイプによらず熱陰極電離真空計は、低真空で使用すると熱フィラメントが焼損するので、高真空、超高真空での利用に限られます。真空装置に後で追加した場合など、インターロック無じ使用する場合には、熱フィラメントの入り切りには、充分にご注意ください。

    三極管型電離真空計の測定子 B-A型電離真空計の測定子


    iv)冷陰極電離真空計
    熱フィラメントを用いないかわりに、磁界を利用して気体のイオン化を促進する電離真空計です。代表的なものに、Penningによって考案されたペニング真空計があり、電極構造を図3.13に示します。一対の平行平板陰極間に環状陽極をおき、それらの軸に平行に永久磁石で磁界をかけ、イオン化確率を高くしてイオン電流を測定し、圧力に換算します。冷陰極なのでフィラメントの焼損がなく長寿命なことと、測定可能な真空領域が中真空と高真空にまたがっているので、プロセスによっては使いやすいのでよく使われています。ただし、測定精度は高くありません。

    ペニング型電離真空計の電極構造


    v)スピニングロータ真空計
    測定子の構造を図3.14に示します。この真空計の測定原理は、磁界により空間に浮かせた鋼球を回転させておき、その回転数が気体の粘性抵抗によって減衰するのを測定して、圧力を求めるものです。測定精度が高く、圧力が基本的物理量の測定から決まるため、真空圧力の基準または副標準としての使用が検討されています。しかし、測定には時間がかかり、慎重な取り扱いを要求されるため、プロセスで使用する真空計としては不向きです。

    スピニングロータ真空計の測定子


  2. 分圧真空計
    残留気体の組成を気体の種類ごとの分圧として測定するものです。現在用いられている分圧真空計は、図3.15に示す四重極型質量分析計がほとんどです。真空中の気体を電離し、生成したイオンを互いに平行に配置された4本の円柱状の電極による電界で分離するもので、マスフィルタとも呼ばれています。

    四重極型質量分析計の分析管の構成


    測定例を図3.16に示します。質量の大きい有機物などは、イオン化する際、どのように分解するかを、測定例を参考にして推定して同定します。

    分圧真空計の測定例