11. 薄膜形成装置のメンテナンス
11.1 メンテナンスとは?
メンテナンスは「装置の信頼性を維持するため」に行なう.
つまり,期待される装置性能と期待される処理を長時間維持することが目的である.
メンテナンスは次のように分類することができる.
- 予防メンテナンス:故障を未然に防ぐために,計画的に行なう
- 事後メンテナンス:故障が発生してから修理を行なう
- 改良メンテナンス:稼動効率のアップなど,性能向上を目的として行う
11.2 実際の装置におけるメンテナンス
故障が発生してから,メンテナンスを行なうのもひとつの手段である.
しかし,その場合は,メーカーのサービスによる修理が必要となるので,復旧に時間と費用を要し,生産計画に支障をきたすことになる.
成膜装置のユーザーにおいては,充分な予防メンテナンスを実施する必要がある.装置の取り扱い説明書「保守」の項には,予防メンテナンスのための保守・点検要領,異常時の処理方法,注意事項が詳細に記載されている.また,定期点検項目とメンテナンスサイクルが,表に示されている.要領にしたがって必ず実施する必要がある.なお,この表のメンテナンスサイクルは,一般的な使用条件で作成してある.昼夜稼動などの使用条件では,回数を増すなどの配慮が必要である.主要な点検部分は次のような部分である.
- 始業時の点検・・・電力,冷却水,圧縮空気などの基本ユーティリティおよび油回転ポンプの油量の点検
- 真空室の清掃・・・汚れは排気時間の延長による生産量の低下と,膜質の低下の原因
- 締結部の点検・・・締め付けが適当かを確認
- 各電極端子部・・接触抵抗の増大は発熱の原因
- パッキン部・・真空リークの原因
- 圧縮空気系・・バルブなどの空圧作動部の動作不良は大きなトラブルの可能性大
- 各機構部の点検・・・滑らかに動作するかを確認
- 各計測器や電源機器の点検・・・正常な値を示しているか,異常表示が無いかなどの確認
- その他・・・筐体や電源内部などにゴミや埃が無いかの確認等
メンテナンスにあたっては,取り扱い説明書にしたがって,日常点検項目を表にして,チェックシートとして利用すると便利である
11.3 メンテナンスのポイント
予防メンテナンスにあたっては,次の点に注意する.
- 正常な状態(動作状態,各設定値,計器の表示等)を正確に把握しておく
- 寿命のある部品について,交換時期を記録しておく
- 各部品や機能の名称を正確に知っておく
- 装置・部品の機能を理解する
- 入出力信号とその用途を理解する
- 取り扱い説明書を通覧する
11.4 トラブル発生時の確認事項
予防メンテナンスを充分に実行していても,トラブルが発生してしまった場合には,次の事項についての情報があれば短時間での対応が可能になる.
- 発生日
- 症状
- 何を行なっている時に発生したか
- どの部分にどんな症状が発生したか
- エラーメッセージが出ているか
- 症状が発生する前に何か変更した箇所がないか.
- トラブルは
- 慢性的または時々起こっていたものか
- 装置に破損箇所はあるか
- 同じ操作をすれば再発するか
- このトラブルとは直接関係のなさそうに見えるトラブルが他に発生していないか.
- 該当装置以外の工場設備などに,変更箇所はなかったか.